転職で年収アップしたのに後悔する人が後を絶たない本当の理由
転職で年収アップしても後悔する人が後を絶たないのは、額面の数字だけを見て、基本給のリセット・評価制度・仕事内容という3つの変化を転職前に把握していないからです。
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」によれば、転職入職者のうち前職より賃金が「増加」した割合は40.5%にとどまります。※1そもそも年収アップ自体が保証されているわけではなく、上がったとしても転職そのものを後悔してしまう方は少なくありません。
この記事では、年収アップ転職で後悔しやすい理由とパターンを整理したうえで、転職前に確認してほしいポイントをお伝えします。
この記事でわかること
- 年収アップ転職で後悔する人の多くは、転職前に「額面」しか見ていない
- 後悔は年収・仕事内容・職場環境の3つが同時に変わることで起きる
- 厚労省データでも前職より賃金が増えた人は40.5%。額面アップは保証されない
- 転職前に確認すべき3つのポイントで、自らのケースが後悔しやすいかを判断できる
年収アップ転職の後悔は「同時に変わる」から起きる
転職すると、年収だけが変わるわけではありません。仕事内容・職場環境・人間関係が同時に変わります。年収が上がったとしても、そのほかが想定外の変化をしてしまうと、トータルで「失敗だった」と感じてしまうのです。
相談を受けてきた経験から、後悔しやすいパターンはある程度決まっています。自分がどのパターンに近いか、確認しながら読んでみてください。
- [年収の「額面」だけで決めた](#年収の額面だけで決めた)
- [前職の評価・実績が新しい職場にリセットされた](#前職の評価実績が新しい職場にリセットされた)
- [転職のタイミングと年齢を読み誤った](#転職のタイミングと年齢を読み誤った)
年収の「額面」だけで決めた
内定が出て、年収が上がった。その瞬間は嬉しいはずです。ただ、額面の数字だけを見て意思決定すると後悔につながりやすくなります。
- 基本給の額と計算方法
- 各種手当(住宅手当・家族手当など)の有無と内容
- 賞与の支給回数・計算式・初年度支給条件
- インセンティブの有無と支給条件
総合的に比較しないと、実際の「働いて受け取れる金額」は判断できません。対価はトレードオフ。きつければ稼げる、時間を犠牲にすれば上がる。そういう構造が年収アップの裏にある場合も少なくありません。
「何を得て、何を手放すか」をあらかじめ把握しておかないと、あとから「こんなはずじゃなかった」ということになります。
前職の評価・実績が新しい職場にリセットされた
転職で後悔した方の声でもっとも多いのが、リセットを受けるパターンです。
前職でどれだけ成果を出していても、転職した会社では「新人」からのスタート。評価はゼロから積み直し、信頼関係も一から構築が必要だということです。
日本の雇用構造上、勤続年数に連動した昇給・昇格のペースがリセットされるため、短期的に見ると「前職のまま働き続けた場合」より収入が下がるケースもあります。
| 項目 | 前職 | 転職先(1年目) |
|---|---|---|
| 評価の蓄積 | 長年の実績あり | ゼロからスタート |
| 昇給ペース | 継続で上昇しやすい | 評価期間を経るまで据え置き |
| 社内での立場 | 安定している | 信頼構築の途上 |
| 発言・裁量 | ある程度確立 | 最初は限られる |
前職で通用したやり方が新しい職場で評価されないという経験は、想像以上に精神的なダメージになります。 転職はリセットではなく、積み上げてきたものの一部が一時的に見えなくなる変化だと理解しておくことが大切です。
転職のタイミングと年齢を読み誤った
転職市場には、年齢によって有利・不利になるタイミングがあります。20代後半〜30代前半はポテンシャル採用が効きやすく、比較的転職しやすい時期ですが、それ以降は実績・専門性が問われる度合いが増します。
また、転職回数が多くなると市場での評価が下がるという現実があります。「転職すればするほど転職できない人たちを生み出すという矛盾の構造がある」。これは転職支援の現場でひしひしと感じることです。転職を繰り返すことで自らのHPが減っていくような感覚、というのがわかりやすいかもしれません。
転職は手段の1つであって、繰り返せばいいというものではありません。 いつ・どのタイミングで動くかという「時機の見極め」が、後悔を防ぐうえで重要な判断軸になります。

後悔しないために転職前に確認したいポイント
転職を後悔した人と後悔しなかった人の差は、事前に何を確認したかにあります。以下の3つは、面接・オファー面談の段階で必ず確認してほしい内容です。
- [基本給・諸手当など](#基本給諸手当など)
- [評価制度・昇給のペース](#評価制度昇給のペース)
- [仕事内容の変化](#仕事内容の変化)
基本給・諸手当など
確認すべきなのは「年収の総額」ではなく、年収を構成する各要素の内訳です。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 基本給 | 手当を除いた月の固定収入はいくらか |
| 賞与 | 固定か業績連動か・初年度の支給額とタイミング |
| 各種手当 | 住宅・家族・通勤手当の有無と金額 |
| 固定残業代 | 何時間分含まれているか・超過分は別途支給か |
| インセンティブ | 条件・上限・過去の平均支給額 |
「年収●万円」という数字の中身を分解して考えることが、後悔を防ぐ第一歩です。額面の年収が上がっていても、みなし残業が多く含まれていたり、賞与が業績連動で変動幅が大きかったりすると、実質的な手取りは思ったより増えないためです。
また、私たちは相談のなかでは「盛った表現をしないように、数字を具体的にうかがう」ようにしています。オファー面談の場でも、遠慮せずに数字の根拠を聞いてみてください。
評価制度・昇給のペース
面接では仕事の内容ばかりに意識が向きやすいですが、評価制度と昇給のペースも同じくらい重要です。確認しておきたいのは、以下のような点です。
- 何をどう評価されるのか
- 評価が給与に反映されるサイクルはいつか
- 1年目から昇給の対象になるのか
成果主義を標榜している会社でも、実際の運用は会社ごとに異なります。評価制度の透明性が低い会社では、頑張っても報われないと感じやすく、後悔の原因になります。
可能であれば「直近3年間の社員の平均昇給率」や「等級・グレードの定義」を聞いてみてください。答え方で、会社の文化も見えてきます。
自分が成果主義と年功序列のどちらの報酬モデルに合っているかを先に把握しておくことも大切です。
仕事内容の変化
「思っていたのと違う」という感覚は、転職後1〜3か月で一気に出てきます。その違和感を入社前に潰しておくことが、後悔のない転職への最短ルートです。
具体的に、確認すべきポイントは以下です。
- 最初の1〜3か月で具体的にどのような業務を担当するのか
- どの範囲まで自らの判断で動けるのか(裁量の範囲)
- 前職でやってきたことを活かせる仕事か、それとも新しく学び直しが必要か
- チームの規模・構成・コミュニケーションの頻度
特に、業界や職種が変わる転職では採用時に期待されていた役割と、実際の日常業務とのギャップが生じやすいです。何ができるかよりも、「やりたいか・やりたくないか」を言語化しておくと、面接での確認もしやすくなります。
「やりたくないこと」を明確にしておけば、ミスマッチを防げるわけですね。

年収アップは3年・5年・10年のトータルで考えると景色が変わる
年収アップを後悔しないためには、初年度の額面ではなく、昇給ペースまで含めた数年後の累計額で比べます。
初年度が高くても昇給がゆるやかなら、数年後には初年度が低くても昇給が続く会社に追い抜かれることがあるからです。ここでは、トータル年収を見極めるための視点を次の順で整理します。
- [初年度の額面より昇給ペースの差が効いてくる](#初年度の額面より昇給ペースの差が効いてくる)
- [5年・10年で年収が逆転するモデルケース](#5年10年で年収が逆転するモデルケース)
- [確認軸を「今いくらか」から「数年後いくらか」へ](#確認軸を今いくらかから数年後いくらかへ)
初年度の額面より昇給ペースの差が効いてくる
年収を比べるときは、初年度の金額よりも「毎年いくらずつ上がっていくか」のほうが、長い目で見ると効いてきます。
厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」を見ると、勤続年数が長くなるほど賃金は上がる傾向があります。男女計・企業規模計の所定内給与は、勤続0年が月26万6,500円です。これが5〜9年で30万3,700円、30年以上では43万3,900円まで上がっていきます。※2
このデータが示すのは、賃金は勤続とともに積み上がっていくという事実です。だからこそ、昇給ペースの差は年々開いていくという前提で会社を比べる必要があります。
だからこそ転職の先輩では、相談のなかで「初年度がいくらか」だけでなく「3年後・5年後にいくらになっていそうか」まで一緒にお話しています。
5年・10年で年収が逆転するモデルケース
例えば、初年度の額面が高いものの昇給がゆるやかなA社と、初年度は低いものの昇給が毎年続くB社を比べると、累計額は次のように動きます。
| 項目 | A社(初年度高い・昇給ゆるやか) | B社(初年度低い・昇給が続く) |
|---|---|---|
| 初年度の額面 | 500万円 | 450万円 |
| 想定昇給率 | 年1% | 年4% |
| 5年目の額面 | 約520万円 | 約526万円 |
| 5年間の累計 | 約2,551万円 | 約2,438万円 |
| 10年目の額面 | 約546万円 | 約641万円 |
| 10年間の累計 | 約5,231万円 | 約5,403万円 |
※上記は「初年度の額面と昇給率を一定と仮定したモデルケース」です。実際の昇給は評価や業績で変動するため、金額を保証するものではありません。
このモデルでは、初年度はA社が50万円高いものの、5年目には単年の額面がB社に逆転され、10年間の累計でもB社が上回ります。昇給率の差は時間が味方するという構造が、ここに表れています。
もちろん、現実の昇給は評価や会社の業績で変わります。額面だけでなく「上がり方の根拠」を確認することが、後悔しない転職につながります。
確認軸を「今いくらか」から「数年後いくらか」へ
年収アップを判断する軸は、「今いくらもらえるか」から「昇給率と継続年数で数年後いくらになるか」へと切り替えることをおすすめします。
オファー面談では、次のような点を確認してください。
- 直近数年の平均昇給率はどのくらいか
- 等級やグレードが上がると年収はどう変わるのか
- その昇給ペースは何年くらい続く見込みか
これらが見えてくると、目の前の額面だけでは判断できなかった「数年後のトータル年収」が立体的に見えてきます。5年後・10年後の累計で考えることが、額面の魅力に流されないための軸になるのです。
ここまで考えると次に出てくるのが「では、自分は何年でどのようなキャリアを目指すのか」という問いです。トータル年収の視点は、その先のキャリア設計と地続きになっています。
年収アップを目指すなら転職「しない」選択肢も実は選べる
転職を考えはじめると「転職するか・しないか」の二択になりやすいです。ただ実際には、年収を上げるための選択肢は転職だけではありません。
弊社の相談のなかでよく確認しているのは、「なぜ今の会社で年収が上がらないのか」という原因です。会社の規模・業種・評価制度・本人のポジションによって、答えは異なります。
会社の構造上どうしても限界がある場合は転職を本格的に検討すべきですが、交渉や部署異動・社内での立ち位置の変化で解決できるケースも意外に多いです。
年収目標があれば先を見据えられているかが肝要
もし、年収目標が明確な方であれば、「その水準に届くには何年・どのようなキャリアが必要か」を逆算して一緒に考えるようにしています。5年後・10年後の自分から逆算して「今何をすべきか」を考えると、転職が今すぐの手段なのか、もう少し先の手段なのかが見えてくるからです。
私たち転職の先輩は、「転職しないのも正解」という結論を、必要があれば出せる立場でお話をうかがいます。だからこそ、現職に残るべきかの壁打ちからはじめても構いません。
後悔のない転職を目指すためにも相談を
年収アップを目指す転職は、うまくいけばキャリアの転換点になります。ただ、「額面が上がった」という事実だけで判断してしまうと、入社後に予想外の後悔を抱える結果になりかねません。
基本給のリセット構造・評価制度の違い・仕事内容の変化。この3つを事前に把握できているかが、後悔を防ぐうえでの分かれ目です。
転職の先輩では、「転職すべきか迷っている」「そもそも年収アップは自らに現実的なのか判断できない」という段階でも、お気軽にご相談いただけます。ご自身のペースで、一緒に考えましょう!
参考情報
- ※1 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」(2024年・転職入職者の賃金変動状況/「増加」40.5%・「減少」29.4%)
- ※2 厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査 結果の概況」(13頁・勤続年数階級別にみた賃金/男女計・企業規模計の所定内給与:勤続0年266.5千円・5〜9年303.7千円・10〜14年327.2千円・30年以上433.9千円)